やっと見つけた愛しい君
ほら、早く手をとって一緒に帰ろうよ


世界の裏切り 第31話


「最終試験は1対1のトーナメント形式で行う。その組み合わせはこうじゃ」
ネテロ会長が布を引っ張って発表した対戦表を見ると、私は301番と闘うことになったらしい。
彼も念能力者であるから必然的に戦いにくくなることだろう。彼は微かにしか気配を出していないため、あまり気にしてはいなかったが、どこか知っているような気を感じる。
だが私の知り合いの中にはあんな顔中に針を刺した人間はいないのでやはり気のせいだったのだろう。なのに、どうしてこれほど彼に違和感を覚えるのだろう。
「このトーナメントは勝ったものが次々抜けていき、敗けたものが上に登っていくシステム!」
ネテロ会長による試合の説明は単純明快であり、なるほどと頷く。例え私が初戦で負けたとしても、その次で勝てば良いということになるのか。
この場の全員が試験の成績や評価の仕方を納得して、第1試合が開始された。
「第1試合、ハンゾー対ゴン!!」
試合開始の合図と同時に駈け出したゴンは、彼の特異な足の速さを活かそうとしているのだろう。
だが、その作戦はいとも容易くハンゾーによって破られ、ゴンは床へ叩きつけられた。
チッと横からキルアの舌打ちが聞こえ、内心で彼が思っていることを推測しながら彼の頭を撫でる。きっとキルアはこれくらいなら自分は避けられるのにと思っているのだろう。
その証拠に「だって姉……」と試験の静寂を破らないように遠慮された小さな声が鼓膜を揺する。そんな彼を宥めるように頭を撫で続ければ、口を閉じてまた試合を見始めた。
その一方的な甚振りにしか見えない試合は、傍にいたクラピカやレオリオを逆上させるには事足りたようで、私はゴンの試合に手を出して彼が不合格にならないか不安になる。
だが、その後の空気はゴンが「脚を切られちゃうのは嫌だ!!でも降参するのも嫌だ!!」と言ったことで、殺伐としていた空気が緩んだものに変わった。
私も彼の真っ直ぐな瞳を見て思わず微笑してしまった。私たちのように拷問の訓練をされてきた者でも、拷問をした者をあんな様に見ることはできない。
やはり彼は何かを持っていると確信したが、隣のキルアはこの状況に納得できないのか一人苛々と思考していた。
結局、その後はハンゾーがゴンのペースに呑まれて降参をしてゴンは勝利した。
第2試合はクラピカ対ヒソカで、数分間闘った末、ヒソカがクラピカに何かを囁いてヒソカが敗けを宣言した。
第3試合はハンゾー対ポックルで、ハンゾーの勝利。第4試合はヒソカ対ボドロでヒソカの勝利。
第5試合でとうとうキルアの出番がきたが、彼は悠々と敗けを宣言した。この程度の相手では不足といた様子で、私はなぜか不安になる。
その慢心が彼の身を滅ぼさないでほしいと心配していると、私の試合になった。
姉、ちゃっちゃとね!」
「いってきます」
キルアは私を多少過大評価している感が否めないので、”ちゃっちゃと”の部分には答えず席を発つ。
全身針で刺されている301番の男を前にして、益々違和感は強まるばかりだ。
「第6試合、対ギタラクル!!」
開始の合図と共にベンズナイフをホルダーから抜き出すが、目の前の光景に身体が動かなかった。
ギタラクルが針を自身の顔から抜き終ると同時に、よく見慣れた、だが10年もまともに話していない双子の兄の顔が現れた。
「久しぶり、
ふわりとなびいた彼の黒髪が視界を占めた。


2012/03/30

inserted by FC2 system