地獄が近づく音が聞こえる
けれどそれはボクにしか聞こえない
一番聞かなくてはならない者たちはそれを知ることもない


世界の裏切り 第30話


『ただ今をもちまして第四次試験は終了となります。受験生の皆さん、速やかにスタート地点へお戻りください』
四次試験終了のアナウンスが島中に響き渡り、ぞくぞくと受験生がスタート地点へと姿を現す。
私たちも草陰から姿を現し、周りの受験生を見渡す。まだそこにはレオリオたちはいなかったが、きっと彼らは受かっていると信じて待つ。
30分程すれば、合格していると信じていたレオリオたちがヨレヨレになりながらも叢から出てきた。
「おつかれさま」
「なーんだ、生きてたのか」
「っこのガキ!素直に挨拶ができねーのか」
「お互い無事で良かった」
「良かったね!みんな一緒で!」
無事に再会できた喜びを分かち合っているとハンター協会の飛行船が迎えに来て、私たちはぞろぞろとそれに乗った。
暫く5人で談笑をしていたが、途中でキルアと共に席を立ち飛行船の中を歩き回る。
「もうすぐハンター試験も終わりだね」
「なんか楽勝だったなー」
他愛のないことを話しながら、大きなガラス窓の下にある街を見下ろす。街はまだ昼間で活気良く賑わっている様子だ。
ちらりと隣のキルアを横目で見やれば、いつぞやの双子の兄と同じように何を考えているのか分からない瞳をしている。
その姿を彼とダブらせて見ていると、視線に気が付いたのかその瞳の色は消え、代わりにどうしたのかという疑問の色が現れた。
「似てるなって思っただけ」
「?」
キルアは私の言わんとしている事が理解できないのか首を傾げて私を見上げてくる。ほら、そういうところとか。キルアの方が若干遠慮気味なのだけれど。
『これより会長が面談を行います。番号を呼ばれた方は2階の第1応接室までお越しください』
「えー、面接かあ。めんどくせー」
「まあまあ、私たちすぐに呼ばれるわよ」
アナウンスが流れたと同時に嫌そうな顔をしたキルアの頭を撫でる。こういう所は全然似てないなあと思いつつ。だけど彼は表情に出さないだけで行動ははっきりとしているものだから、結構似ている方かもしれない。
『98番の方、お越しください』
「じゃ、いってきます」
「いってらっしゃーい」
とうとう私の番号が呼ばれ、ネテロ会長の部屋に向かい扉をノックした。中から入ってきて良いぞと返事があったので、扉を開くと座敷の上に座っている彼がいた。
まあ座りなさいと座布団を指されたので、お言葉に甘えて座る。面談で一体何を聞かれるのだろうかと不思議に思っていると、彼が口を開いた。
「では、参考程度にちょっと質問に答えてもらえるかの?」
「はい」
丁寧に座った私の目を覗き込むようにして、ネテロ会長はそう言った。なぜか目を逸らすことが出来ず、私も彼を見つめる。
「ではまず、なぜハンターになりたいのかな?」
一見隙だらけに見えるような目で見られているが、その実物事の本質を見抜くことに長けた目に曝されて、多少居心地が悪い。
「…守りたいものを守れるようになるため、です」
数秒考える素振りをして、そう答える。私にとって心身ともに強くなる事が守りたいものを守れるようになることなので、これが一番いい答えだと思った。
「なるほど。ではお主以外の9人の中で一番注目している者は?」
「405、403、404番です」
ふむ、では最後の質問じゃとネテロ会長が言う。どうやら次で解放されるらしい。
「9人の中で今一番闘いたくないのは?」
「………405番です。弟の友達なので」
友達という言葉を選び出すのに多少時間がかかったが、言葉にすることができた。ご苦労じゃった、さがってよいぞよという声に従い、一礼してから扉を開けて退出する。
すぐ側で控えていたキルアとバトンタッチをして、私はその場をゆっくりと離れた。
もうすぐ最終試験会場に到着するらしい。


2012/03/30

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