まぶしくてまぶしくて
たぶんこういったものに憧れてたんだ


世界の裏切り 第19話


先頭の集団が走り出した事により、自分たちも徐々に走り出す。まずは持久力を試されるのだろうか。
こんな速度なら走っても全然余裕だったが、ただ走るだけじゃつまらないからスケートボードに乗って遊ぶ。
「あら、前よりうまくなってるわね」
「でしょ!?いっぱい練習したんだー」
横で走っている姉から褒められ、思わず頬が緩んだ。つまらないってのもあるけど、彼女を驚かすためにこれに乗ったというのもあった。
すいすいと、苦しそうに走っている人ごみをすいすい抜けていく俺を、姉がその後ろから追いかけてくる。彼らと違って彼女は全然苦しそうな表情などしていない。
やはり普通の人間と俺たちでは天と地程の差があるのだ。こんな奴ら、すぐにリタイアしてしまうに決まっている。受かるのは精々姉や俺、あとヒソカっていう危ない奴ぐらいだろう。
普通の奴らが受かるハンター試験なんかで合格したって何にも楽しくない。そう思っていると、不意に声をかけられた。
「おいガキ、汚ねーぞ!そりゃ反則じゃねーかオイ!!」
「何で?」
振り返ると、スーツを着たオッサンが怒った顔でこっちを見ている。いったい何が反則なんだろうか。テストには持ち込み自由なのに。
大きい声が響いたことにより、後ろにいた姉がむっとした表情でこちらに近づいてきた。もう、こんな奴ら俺一人で十分なのに。
「私の弟に何か用ですか?」
突如、音も無く現れた姉に彼らは酷く驚いた顔をした。それもそうだ、彼女は一切の気配も無く彼らに近づいたのだから。
だけど、何よりも姉が綺麗でスタイルが良い事が要因だろう。その事に誇らしさを覚えながらも、むっとした。人の姉貴を変な目で見てんじゃねーぞ。
「何かスケボーに乗ってたらいちゃもんつけられたんだけど。…でも良いや、俺も走ろーっと」
彼女に、オッサンから文句を言われた事を伝えながらも、ちらりと目に入った同年代の少年を見て、スケートボードから降りる。
「ねえ君、年いくつ?」
「もうすぐ12歳!」
髪の毛がツンツンしている少年―名前はゴンというらしい―と話していると、どうやら自分と同い年だったらしい。後ろから耳に入ってくる会話では、姉がオッサン達と打ち解けているようだ。
ゴンと話していると、笑顔が太陽のようにまぶしい。彼は純粋でまぶしすぎて、闇に浸かってきた俺には目が眩んでしまいそうだけれど、何だか楽しかった。
こんな気持ち初めてで、戸惑ってしまうけれど、決して不快なものではない。むしろ心地よくて、抜け出したくならないくらいに。
こんな奴と友達になれたらいいな。ゴンと一緒に笑っていたい。

何かが心に芽生えた。


2011/02/25

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